事業承継の話

とかち支部広報委員会では、会員が同友会での学びをどのように生かしているのかを取材し、シリーズでお届けします。

ちょっと時間が空いてしましましたが、第三弾として事業承継についてお話をおうかがいしました。今回の先輩経営者さんは息子さんへの事業承継だったのですが、どのような考えで社長の座を譲ったのか、またまたたいへん興味深いお話をお聞きすることができました。

業種と同友会歴を教えてください。
住宅建築が主です。同友会歴は20年以上になります。
ご自身も社業を引き継いだのですか。
まあ、引き継いだと言えば引き継いだのですが、父の頃は個人事業でした。27歳で家業を手伝うようになって法人化し、2000年に代表取締役になりましたが、ほぼ創業のような感じで取り組んできました。
同友会とのかかわりを教えてください。
社長になって10年経った頃、業績がしばらく横ばいだったんです。15年経過してもその状態が変わらず「あ、俺、ギアチェンジしてないな」って思ったんですよね。もちろん自分なりにアクセルは目いっぱい踏んでいました。でも業績が上がらない。「このままじゃダメだ」と思い、同友会に入って経営指針を勉強し始めました。自社の経営状態をひも解いてみると利益率が低い。それは経費率が利益を圧迫しているからだということに気づき、経営改善につなげていきました。
いつ頃から事業承継を意識しましたか。なにか準備したことはありますか?
創業して間もない頃には、もう次の世代に渡すこということを意識していたと思います。幸いなことにその気持ちが伝わり息子にもその意識があったようで、特に承継のために準備したことはありません。
後継者育成の取り組みについて教えてください。
私自身も幼い頃から独立志向の強い子供で、それが息子にも遺伝したのかもしれません。私から見ても経営者としての才覚があると思います。ですから、まずは安定した会社にして渡す、ということでしょうか。
また、これはたまたまなのですが、諸事情で長男が入社してから私と二人きりで会社を切り盛りした時期があったんですよね。それがよかったかもしれません。
経営を譲ることに迷いはありませんでしたか。
まったくありませんでした。世の中の流れが早すぎるので、もともと私がいつまでも社長の座にしがみついていてはいけないと思っていました。また、息子も息子なりに将来像があるようで、会社のトップというのは一番大きな夢を持っているヤツがやらなきゃダメだろうと思いました。それに私自身も会社の周辺業務で別会社を経営していて、引退するわけではありませんからね(笑)
ありがとうございました。最後に経営権を移譲するにあたって社内外への理解をどのように進めたかお聞かせください。
そのへんは3年くらい時間をかけたように思います。金融機関とか官公庁・自治体などはやはり数字が重要視されます。ですから予算のロードマップをしっかりもって経営指針の策定にあたり、ご理解いただくようにしました。

なんだか出来のいい息子さんに承継した羨ましい事例でしたが、息子さんに引き継ぐ基盤づくりに経営指針を生かしていらっしゃるところなどたいへん参考になりました。まさに経営指針に始まって経営指針に終わる、非常に中小企業家同友会らしいインタビューだったと思います。