同友会の仲間と付加価値創造力を高め合い、価格決定権のある企業づくりを目指そう!

1.原材料が高騰する中、自社に価格転嫁力はあるか?

 7月2日の日本経済新聞電子版に「仕入れコストDI、製造業全業種で上昇 鉄鋼13年ぶりの高さ 日銀短観」という記事が載っていました。仕入れコストDIとは、仕入れ価格が「上昇」と答えた企業の割合から「下落」の割合を引いた価格判断指数のこと。製造業全体で前回のプラス24から36に上昇。とりわけ金属製品の上昇が目立っており、リーマンショック前の2008年以来、13年ぶりの高水準にあるそうです。7月7日、とかち支部経営労働委員会によって開催された「金融懇談会」でも、日本銀行帯広事務所の田原謙一郎所長が解説していました。原因は国際商品市場の高騰。アメリカ、中国の景気回復を受け、金属や木材などの仕入れ価格が上がり、日本の製造業にも大きな影響を及ぼしているのです。
 ここでの最大の問題は、コスト上昇分を価格転嫁できない中小企業が多いこと。2020年度版「中小企業白書」によると、製造業の価格転嫁力指数(どの程度仕入れ価格上昇分を販売価格に転嫁できているかを数値化したもの)では、大企業を大きく下回っています。原価は上がっているのに、販売価格に転嫁できない。これは今に始まったことではなく、バブル崩壊を機に大企業と中小企業の格差が広がってきていることがわかります(2020年度版中小企業白書、第2-3-33図)。
 これは製造業だけの話ではありません。コロナ禍によって需給のバランスが崩れ、価格上昇と下落のコントラストがハッキリしてきました。価格転嫁力、言い換えれば、自社が価格決定権を持つことができるよう、これまで以上に商品力、付加価値力を磨いていく必要があるのではないでしょうか。

2.「ため込む」から「将来を見据えた投資」へ

 その一方では、「個人も企業もお金を手元にため込む傾向が強まっている」と日本経済新聞では報じています(6月26日、社説より)。家計の金融資産は前年比7.1%増の1,946兆円。民間非金融法人企業の現預金は320兆円。株価値上がりで増えたという側面もありますが、日本では個人も企業も手元にお金をおく傾向が強いようです。また、コロナ禍により消費が抑えられたことも大きな要因のひとつ。
 コロナ収束の目処がつくまでは、ため込む傾向が続いていき、自社の成長や技術開発に向けた投資にお金がまわりにくいことも予想されます。その一方、経営環境は激変していますから、将来を見据えた投資が必要であることは言うまでもありません。大きな方向性としてはSDGsとDX(デジタル・トランスフォーメーション)。すでに、業務のデジタル化による生産性向上や脱炭素に向けて取り組み始める企業が増えてきています。同友会会員としては「人を生かす経営」の考え方に沿って、労働環境の改善によりいっそう力を入れることが重要と考えます。
 金融懇談会では、日銀の田原所長が豊富なデータを駆使して、「個人消費は秋から回復」「外需は上振れする」「原材料のコスト高」の3点を強調していました。また、観光産業の比率が高い北海道経済は、道外に比べて回復が遅れるとの予測も示されていました。ただし、十勝においては農業が基幹産業となっているため、この限りではありません。農業、食品分野を中心に、付加価値力は年々高まっています。地域経済は底堅く、コロナの逆風を跳ね返す力は十分備わっていると考えられます。

3.テーマを絞り、DXに向けた実践行動を

 業種間、企業間、地域間の格差拡大と経営環境の激変。地域も世界も大きく動いている中、とかち支部会員企業の中にも、「新商品を開発したい」「新たな販路を切り開きたい」「時代を先取りするビジネスモデルを確立したい」といったニーズが増えつつあるのではないでしょうか。
 実際に、コロナ禍を機に革新的な取り組みや思い切った行動に踏み出している会員企業が少なくありません。そうしたチャレンジャーな企業の取り組みに注目すると同時に、一個人としても応援したい気持ちです。
 取り組みが革新的であればあるほど、知識、技術、経験の乏しい未知な世界へ向かっていくことになります。失敗や無駄と思える投資も覚悟しなければなりません。また、仲間の会員がすでに持っている技術、ノウハウであるのに、遠回りして自力で身につけようとするなど、単独の取り組みでは資金や労力のロスが大きいのではないかと思います。
 北海道中小企業家同友会とかち支部には、成長意欲あふれる会員企業が850社集まっています。これまでも各部会、研究会、プロジェクトを通じて、さまざまな実践活動が展開されてきたことは、皆さんご存知の通りです。とかち支部の特徴は実践活動の革新性とエネルギーの高さであることは誰もが認めるところでしょう。
 今日の幹事会では、「オンラインビジネス研究会」(仮称)を提案させていただきます。DXといってもピンとこない方も多いと思います。しかし、これからのビジネスにおいて、デジタル化を抜きに語ることはできません(全業種とは言いませんが)。「デジタルでビジネスモデルを変える」とまでいかなくとも、10年、20年先を見据えて、何らかの形でデジタルを採り入れていく取り組みが不可欠です。
 速やかに実践行動がスタートできるよう、具体的にテーマを絞って少人数で共同研究及び実践するというのが提案の骨子です。ぜひ、前向き、積極的なご意見をお聞かせいただければと思います。

2021年7月12日

同友会の仲間と付加価値創造力を高め合い、価格決定権のある企業づくりを目指そう!