新しい知恵と新しいツールを使って人手不足、採用難を乗り越えよう!

 北海道中小企業家同友会とかち支部の支部長として4年目を迎えました。幹事をはじめ、とかち支部会員の皆様のご尽力に感謝申し上げます。地域企業の成長と地域の発展のため、支部活動に力を尽くしたい思います。引き続き、よろしくお願いいたします。

1.会員企業調査から浮かび上がる採用難

 3月31日(金)、とかち支部では2023年合同入社式が開催されました。参加したのは34社74名。新社会人として、あるいは会社の一員となった決意が伝わってくる合同入社式でした。参加企業の経営者、上司の方々も、大事に育ていこうという気持ちを新たにしたのではないでしょうか。
 4月15日付の中小企業家しんぶんに気になる記事が載っています。会員企業対象の賃上げ・初任給に関するアンケート結果。「平均アップ率3.55%、7,865円」とあり、初任給は全学歴、職種とも上昇しています。その背景には物価高騰という理由もあるわけですが、それ以上に人手不足、採用難があることは疑いありません。
 今回のアンケートに回答した会員企業は、全道5729社のうちの122社。回答が少なかったことも気がかりです。ゼロゼロ融資の返済が始まる中、昇給の原資が十分にない。あるいは先行きが不透明という企業が多いと考えられます。回答を躊躇した会員が多かったのかもしれません。企業物価は上昇し続けています。会員企業の実態としては、アンケート結果よりも低い賃上げ・初任給に留まるのではないでしょうか。そんな中、今後ますます採用活動に苦労する会員企業が増えることが予想されます。大企業と中小企業の賃金格差は開くばかりです。
 我々中小企業家としては、付加価値向上に加え、賃金では比べられないような地域企業としての魅力を高めていく、伝えていく努力が求められていると思います。学生、求職者は単に収入・待遇面だけで就職先を決めているわけではありません。働きがいや地域貢献を身近に実感できる地域企業のよさを伝えていく努力が欠かせません。

2.お金ではなく知恵を貸してくれる同友会

 4月10日(月)には北海道中小企業家同友会の常任理事会が行われました。藤井代表理事のあいさつの中に「同友会はお金は貸してくれないが、知恵を貸してくれる」という話がありました。確かにその通りです。
 融資の返済、原価の高騰、賃金の上昇。お金にまつわる悩みは尽きないわけですが、お金と同じくらい必要なものが「知恵」ではないでしょうか。アイデアや知恵がないと、新商品は生まれませんし、商品の質やサービスは向上しません。旧来と同じ商品を同じように販売するだけになってしまいます。変化の激しい今日、自社が同じ場所に留まっていたならば、あっという間に古いめかしい会社になってしまう可能性があります(業種にもよりますが)。
 絶えず新しい情報をキャッチし、新たな刺激を受け、これまでやったことのないチャレンジをする。時代の大きな変わり目にある今日であるからこそ、知恵が求められる。それが得られる場所が同友会であり、会員企業同士の交流なのだと考えます。それゆえに、同友会の仲間を増やしていくことが重要です。2022年度は北海道同友会としては増減数ゼロでした。入会、退会とも349名。3月末時点の全道会員数は5693名です。とかち支部は入会55名、退会41名。14名の増加という結果になりました。同友会の例会、セミナー、各種勉強会・会合、実践活動から得られる知恵は、何物にも代えがたいものです。積極的に参加していただけるよう働きかけ、退会を防止するとともに、新たな仲間を増やしていきたいと考えています。

3.AIは人手不足解消に役立つか?

 今年に入ってから、チャットGPTをはじめとする生成系AIに関する報道が止まりません。警戒論が出始め、イタリアのようにチャットGPTを一時的に禁止する国まで現れるほど。アメリカでは開発の一時停止を求める署名活動も展開されています。
 その一方、生成系AIの活用によって生産性が劇的に向上する可能性があることは紛れもない事実です。マイクロソフトはGPT-4を含む大規模言語モデルを組み込んだ「Microsoft 365 Copilot」を発表しました(数ヵ月以内にリリースされる予定)。文書作成はもちろん、エクセルでは質問に基づいて新たな式をつくったり、パワーポイントでは文書を入力するだけでスライドを作成できるとのこと。AIに面倒な作業を任せて、大幅な時短が実現するかもしれません。
 オープンAI(チャットGPTの開発元)やペンシルベニア大学の研究者は、「チャットGPTのような大規模言語モデルの活用によって労働者の80%が影響を受ける」との論文を発表しました。これは一面では脅威とも受け取られますが、プラスに捉え直せば、人手不足に悩む地域企業にとって有効なツールと言えるのではないでしょうか。上手に活用すれば働き方改革にも結びつけることができそうです。
 DXというと難しそうなイメージがつきまといます。しかし、ふだん使い慣れているソフトや日常業務にAIを組み込んで業務効率を高めることなら、容易にできそうな気がします。ただし、使用に際してはリスクを考慮しなければなりません。社内では「個人情報、機密情報は扱わない」といったルールづくりが求められます。
 未知の部分の多いツールですから、社内ではもちろん、会員同士の情報交換や学びあいが重要です。思わぬリスクが隠されているかもしれません。十分注意しながらも、積極的に活用して、自社の生産性向上につなげていきましょう。

2023年4月20日

新しい知恵と新しいツールを使って人手不足、採用難を乗り越えよう!