経営環境の逆風を乗り越え、ポストコロナに向けて変化し続けよう!

1.北海道中小企業家同友会第54回定時総会より

 6月6日(月)、一般社団法人北海道中小企業家同友会第54回定時総会が開催されました。2022年度のスローガンは「激変を乗り越える同友会づくり、企業づくりをすすめよう」。「激変」という強い言葉が使われており、今日の中小企業、そして北海道を取り巻く経営環境の厳しさが表れています。
 定時総会の議案書は120ページの冊子にまとめられています。北海道同友会のWEBサイトからダウンロードできるようになっているので、関心のある方はぜひダウンロードしてください。
https://hokkaido.doyu.jp/20220606sokaigian/
 私が注目するのは、「中小企業の視点で見つめる情勢の特徴」という項目です。3ページにコンパクトにまとめられており、とても理解しやすい内容。世界経済、日本経済の見通しと課題。そして、北海道経済の行方について述べられています。
 同レポートでは、コロナショックに続くウクライナ戦争によって、世界銀行は「スタグフレーションのリスクが増大し始めている」と指摘。急速な円安と重なり、日本でも国内企業物価指数が前年比+9.5%と、40年ぶりの伸び率となりました(4月12日日銀発表)。中同協が実施したアンケートでは「8割を超える企業が原材料費の価格転嫁に至っていない」とのこと。北海道同友会の景況調査(DOR)では、2022年1~3月期の業況判断が15.9ポイントの大幅悪化となっています。売上・採算、一人あたりの売上・付加価値は「悪化」「大幅悪化」が多数。さらには「仕入れ単価上昇が続く」との回答が増えています。経営上の問題点は「仕入れ単価上昇」が57.3%。ポストコロナに向けて活動を活発化させたいと思いつつも、原価高騰に悩んでいる会員企業の姿が浮き彫りとなっています。
 激変する世界、日本、地域の中で、嵐が去るのを待つか、新たな道を切り開くのか。さまざまな考え方はあるものの、世の中が急激に動いているわけですから、「自社だけは変わらない」という選択肢はないのではないでしょうか。企業経営者の経営判断が今ほど重要な時期はありません。

2.経営環境と個々の企業の「激変」

 2020年10月から、会員企業訪問、未会員企業訪問を月3回ペースで行っています。話を伺うと、コロナ禍の2年半の間に、さまざまな取り組みが行われていることを教えられます。新商品開発、新分野へのチャレンジであったり、組織改革やSDGs、DXへの取り組み。多くの企業がこれほど急速に変化した時期は、戦後の混乱期を除いてなかったのではないでしょうか。経営環境が「激変」しているだけではなく、個々の企業も「激変」している。もちろん変わらない企業も、変える必要のない企業もあるでしょう。しかし、変わりたくてもどう変わればよいのかわからない、という企業が潜在的に多数あるのではないかと想像します。
 自社を変えるためのヒントが詰まっている。それが中小企業家同友会の魅力のひとつです。「なかなか参加する時間がなくて……」という声を耳にすることがありますが、スケジュールの優先順位を繰り上げるだけで、例会や勉強会への参加回数を増やすことは可能となるはず。ときには、仕事よりも優先させるべき学びの場がある。それだけの価値が同友会の例会、勉強会、セミナーにはあります。ぜひ、仲間の経営者を誘って、会への積極的な参加をお願いします。

3.観光競争力ランキング首位を追い風に

 5月に開かれた世界経済フォーラム(WEF)の年次総会で、日本が2021年の旅行・観光競争力ランキングの首位に立ったというニュースがありました。日本はコロナ禍に伴う厳しい入国制限を続けてきましたが、ようやく制限緩和に向けて動き出したところ。まだ正常化にはほど遠い状況ではあるものの、観光、飲食関連業界にとっては、明るい兆しと言えるのではないでしょうか。
 ポストコロナを見据えて、地域の魅力をいかに高め、いかに情報発信するのか。今後、動きが活発化していくに違いありません。原料価格高騰と円安によってダメージを受けている業界・企業も、ビジネスのやり方によっては追い風に変えるチャンスがあるのではないかと思います。
 それとともに、最近になって「パブリック・ベネフィット・コーポレーション」(PBC)という言葉を耳にするようになりました。「公益企業」という意味ですが、アメリカでは、社会、環境、人権などに配慮して経営する企業に与える認証制度があるそうです。こうした広がりは「Bムーブメント」と呼ばれ、岸田首相の「新しい資本主義」にも影響を及ぼしているようです。
 日本企業はもともと公益を重視する傾向にありますから、わざわざPBCを名乗る必要はないのかもしれません。アメリカの動きから学ぶべき点は、地域の魅力度を高めていくために、地元の企業がそろってPBCになっていくことが重要であるということ。SDGsにしろ、PBCにしろ、中小企業家同友会の理念に非常に近いものがあります。むしろ同友会理念が先であり、世界がようやく追いついてきたと言うべきかもしれません。
 ここ十勝においては、とかち支部会員企業が率先してPBC、すなわち公益につながるような企業活動を行っていくことが求められます。自社の繁栄だけではなく、地域の中長期的な成長・発展につながる活動を心がける必要があるのではないでしょうか。

2022年6月13日

経営環境の逆風を乗り越え、ポストコロナに向けて変化し続けよう!