「進取の心」を持って経営に取り組み、地域企業の可能性を切り開いていこう!

1.第36回全道経営者〝共育〟研究集会 in 苫小牧

 10月8日(金)、3年ぶりとなる第36回全道経営者〝共育〟研究集会(道研)が苫小牧で開催されました。当初はハイブリッド開催を計画していましたが、8月から9月にかけての緊急事態宣言を受けて開催方法を変更。道研初となるオンライン開催となりました。参加登録者数875名。リアル開催にはリアルの大変さがありますが、今回設営した苫小牧支部はオンラインならではの苦労があったのではないでしょうか。途中、若干音声の不具合がありましたが、全体として質の高い学びを得ることのできた道研だったと思います。
 とりわけ、記念フォーラムでは(株)吉村の事例報告が圧巻でした。苫小牧支部の髙橋憲司支部長がコーディネーター役を務め、(株)吉村の橋本久美子社長、人財サポート課の伊久美真由香氏、本社営業社員の根井隆行氏の3名が報告するという、これまでにない進め方。それぞれの立場から自社の経営や企業文化、事業展開について語られ、大変興味深いものがありました。また、3名の話しぶりから、オープンでチャレンジ精神あふれる社風が伝わってきました。このような報告スタイルは真新しく、とかち支部の学びの中にも取り入れてみたいものだと感じました。
 道研の前半に行われた分科会では、私は第1分科会に参加しました。報告者は慶應義塾大学経済学部教授の植田浩史氏。全道の地域政策委員会が担当した分科会だけあって、日本及び北海道経済の現状が語られ、その上で中小企業の存在価値と可能性が示されました。「地域に存在する(地域資源を生かす)」「中小企業家(経営者としての自覚と責任)」「創造」「地域の生活、雇用を支える」「産業構造の変化を支える」という5つの存在価値が掲げられ、それを生かすには「人間性」「社会性」「科学性」が重要という話でした。まさに中小企業家同友会の理念の本質を突いた報告だったと思います。また、「復古はダメ、創造こそ重要」という話も印象的でした。
 他の分科会に参加された方々はどのような学びをされたでしょうか? いずれにせよ、今年の道研テーマ「Next Stage! ~『進取の心』が明日を動かす~」を随所に感じさせる大会となりました。

2.経営環境の急速な変化と「進取の心」

 このところ、急速に経営環境が変化しています。10月4日の臨時国会で第100代総理大臣として岸田文雄氏が就任。岸田新政権が誕生しました。衆議院は解散、10月31日投票というスケジュールで進んでいます。政治は地域経済に多大な影響を及ぼすこととなりますから、当然注目されるところです。
 さらに気になるのは、最近の円安傾向。10月8日には2年半ぶりの円安ドル高(1ドル=112円前半)となっています。さらに同日、原油市場では7年ぶりとなる1バレル=80ドルに。すでにさまざまな業界に広がっている原材料費上昇がさらに進みそうな気配です。
 このような中、新型コロナウイルス感染症の新規感染者数が急速に減少しています。ワクチン摂取率が高まっていることが最大要因と考えられます。しかし、このまま一本調子に収束へ向かうと考えられません。万全の対策を講じた上で、経済活動を活発化させる。当面はそのように進んでいくことになりそうです。
 私たちは個々の企業活動としても中小企業家同友会とかち支部としても、コロナ禍で痛んだ地域経済を立て直すために、あらゆる方策を講じていくことが求められています。道研の「進取の心」をもって、創造的、積極的に行動していかねばなりません。立場や考え方の違いを乗り越えて、地域の中でお互いに協力し合うような場面が今後ますます増えていくことでしょう。

3.やりたいかやりたくないかで考える

 道研の話に戻りますが、(株)吉村の橋本久美子氏はこのように語っていました。
 「できるかできないかで考えるのではなく、やりたいかやりたくないかで考える。できないって決めないで、やってみたら違う景色が見えるようになる」
 このような話は、革新的な企業経営者の多いとかち支部の会員の皆さんなら、理解、共感していただけるのではないでしょうか。
 残念ながら、コロナ禍が2年近く続く中で、多くの人の心の中に「変化に対する恐れ」や「縮み思考」のようなものが現れているような気がします。経営者はチャレンジ精神にあふれていても、一般の社員さんまでチャレンジ精神、積極性を求めるのは、少し無理があるのかもしれません。けれども、コロナ禍は「自社の経営や人生のあり方を変えよ」というメッセージであると解釈すれば、できない、無理と決めつけてしまうのはもったいないことです。自社、そして自分をよりよい方向へ変えるには、今が絶好のチャンスといえます。経営者が変わることで、自社の社員さんにも「変えたい、変わりたい」という意欲が芽生えてくることになるでしょう。
 その意味でも、「やりたいかやりたくないかで考える」という、橋本氏の話から学ぶべき点があると感じます。強烈にやりたいことがあれば、「できるかできないか」は二の次になる。経営者はそのことを何度も経験しているはずです。自社の社員さんにもそのような経験をさせる、機会や場所を提供する。それが同友会の共育であり、「人を生かす経営」なのだといえるでしょう。
 コロナ禍のような大激変期を乗り越えるには、「社長が強烈なリーダーシップを発揮する」か「同友会型の全員参加型経営を実践する」以外にありません。さまざまな企業の事例を自社に取り込んでいき、企業変革を進めていきましょう。

2021年10月11日

「進取の心」を持って経営に取り組み、地域企業の可能性を切り開いていこう!