「経営指針成文化の地道な取り組み」と「DXへの速やかな対応」の両方が求められる年

1.2020年度第2回常任理事会より

 10月8日(木)、第2回常任理事会が開催されました。
 コロナ禍から半年以上経過し、各支部ともオンラインを併用するなど新たな活動スタイルが定着しつつあります。その中で、札幌支部と苫小牧支部から取り組みの報告がありました。
 札幌支部では「コロナ禍を生き抜く経営戦略」という連続企画が継続されています。加えて、9月から10月にかけては、経営指針委員会と連携して「経営計画見直し講座」を4講にわたって開催しているとのこと。案内には「外部環境、内部環境を分析し、稼ぐ力をつけよう」というサブタイトルが付いていました。「環境が激変する中、今こそ経営指針の見直しが必要である」との話は、今回の常任理事会の中で度々出てきた言葉です。
 苫小牧支部では「2020経営基礎講座」と題して、自社の基礎体力アップを目的に5講座が開催される予定になっています。会計、人事・労務、ICTがおもなテーマ。コロナ禍にあるからこそ、経営の基礎固めが重要であるという考え方。こうした講座を経営者と中堅幹部が受講することで、企業の基礎体力は着実に強化されていくのではないでしょうか。
 10月27日には、北海道中小企業家同友会と北海道経済部との懇談会が行われることになっています。同友会からは正副代表理事ら13名、道経済部からは経済部長ら9名が出席予定。感染症対策と中小企業支援が大きなテーマ。道に対して要望をお持ちの方は事務局を通じて出してほしいという呼びかけがありました。
 また、守代表理事からは開会あいさつの中で、「銀行の担当者に『自社の伴走者』となってもらうことが大事。そのためには自社の経営課題を明確にし、それを銀行の担当者に対してではなく、支店長に伝えることです」という話がありました。金融機関との関係強化が重要。新政権が誕生し、地銀や中小企業再編へ向かっていく可能性が高まっています。自社の経営指針を取引銀行に伝えることも、企業防衛のひとつと言えるのではないでしょうか。

2.経営指針の必要性

 毎年3月に開催されている経営指針研究会総括報告会ですが、今年は4月と10月の2回に分けて行われることとなりました。10月6日には2019年度研究生6名が経営指針成文化の成果を報告。私はZOOMで参加しましたが、オンラインでも十分伝わってくる熱意と思いのある発表でした。同友会の経営指針は「経営理念」「10年ビジョン」「経営方針」「経営計画」の4つによって構成されています。講師や指導者はいません。テキストを使って自分で考え、ワークシートに記入し、月1回の講座の中で研究生や経営指針委員、サポーターから質問やアドバイスをもらいながら、1年間かけてじっくりまとめ上げていくというつくり方。大変な労力と時間が必要ですが、それだけのことはあると思います。
 経営指針によって経営者としての自覚が深まった。会社が変わった。人が育つようになった……。すぐに効果が現れるものではありませんが、長い目で見ると経営指針は自社に変革をもたらします。
 コロナ禍の今、そのような手間のかかることをする暇はないという考え方もあるでしょう。けれども、逆風が吹き荒れる中で経営指針づくりに真摯に取り組む2020年度研究生や発表を終えた2019年度修了生の姿を見ると、これが強靱な企業をつくる上での王道ではないかと考えます。北海道中小企業家同友会2020年度活動の力点の中に「経営指針の再構築を」と掲げられている意味を、今一度思い起こしてみましょう。まずは、テキストである「経営指針成文化の手引き」と「働く環境づくりの手引き」を多くの会員におすすめしたいと思います。

3.DX(デジタル・トランスフォーメーション)

 菅政権が誕生し、「デジタル庁創設」が基本方針として打ち出されました。2018年に発表された経済産業省の「DXレポート」によると、老朽化、ブラックボックス化した既存システムが残存した場合、国際競争への遅れや経済の停滞が起こるとされています。「2025年の崖」と呼ばれるもので、2025~30年までの間に最大12兆円の経済損失が生じると推定されています。
 コロナ禍により、企業規模の大小を問わず急速にデジタル化が進んでいます。単にZOOMを使うようになったというだけではなく、ビジネスのやり方、商品開発、製造方法にもデジタル化が普及していき、生産性が劇的に変化した企業も少なくありません。
 アナログからデジタルへの置き換えが困難な業種も多いことでしょう。しかし、部分的にではあってもデジタル対応力を高めていかないと、自社の成長の芽を摘むことになるのではないかと思います。
 DXの本来の意味するところは、「ITの浸透により、人々の生活が根底から変化し、よりよくなっていく」というものです(2004年、エリック・ストルターマン教授)。SDGsとも共通するところの多い考え方。ITによってSDGsを推進していく。そのように理解してもよいのではないでしょうか。
 地域企業の多くは、少なからずIT企業をはじめとするDXに強みを持つ企業・業界から影響を受けています。気づいたら市場が縮小していた、顧客を失っていたということにもなりかねません。アナログのよさを認識しつつも、デジタルへの対応力を強めていく。コロナ危機により、その必要性がますます高まっていることを痛感します。私はそのように考えますが、皆さまのご意見をぜひお聞かせいただければと思います。

「経営指針成文化の地道な取り組み」と「DXへの速やかな対応」の両方が求められる年