- 第1回 ソーゴー印刷 株式会社(2016年6月10日 取材)
潜入!ソーゴー印刷!
印刷という行為はどんな人間の身近にも存在している。ネットで見つけた資料やワープロで作成した文書の印刷等、頻繁に活用している人も決して少なくない。
ソーゴー印刷株式会社は1974年に日邦総合印刷と曽我印刷とが合併して開業され、今では主たる出版物「SLOW(スロウ)」をはじめとしてさまざまな印刷物を出版している。印刷事業に加え、ロゴなどのデザイン、WEB制作、企業紹介などの動画制作、空撮、「しゅん」などのフリーペーパーの発行、イベント運営など多様な事業展開を行っている。制作物は100%社内スタッフの手作りであり、社内での一貫制作にこだわっている。
職場内のアットホームであたたかな雰囲気が印象的だった。
How to make the book?
まず、記事ができるまでには次の工程があることを教えていただいた。
- コンセプトの設定
コンセプトを考えるとき何を伝えたいのかを大事にする。なぜ作るのか目的を考え、誰に読んでもらいたいのか対象を考える。ここが記事を作るうえで大事な土台になるところ。これが決まらなければ何も始まらない。 - 企画
制作物を作るためにどうするか。コンセプトの次に重要。このあとの作業に大きく関わるので意見交換が大切である。 - 資料収集
情報収集の方法は大きく2種類あり、1つめは自分で見る・聞く・味わうなどして得る、2つめはインターネット・本などで調べる方法がある。取材にあたるのが1つめの方法、資料収集にあたるのが2つめの方法。 - 取材・撮影
取材は周囲の状況など五感で感じたことをメモすること。これらで得た情報を使い記事にする。 - 原稿作成
限られたスペースの中で本当に知ってもらいたいエピソードにしっかりと文字数を使うことが大切。書き終わったものは一晩寝かせると客観的に見ることができ、訂正箇所も見つかる。 - 校正
長くなっている一文や、主語が多用されている文、思いが伝わりにくくなっているところが見直しのポイントになる。 - レイアウト
仕上げの作業。文字や写真を伝わりやすいように配置してはじめて記事が完成する。
次いで工場を案内していただいた。いよいよ印刷会社の裏側への潜入開始だ。はじめての者には迷路のような室内。奥へ入るほど複雑で大きな機械が私たちを出迎えてくれた。以下、工場内で説明いただいたことを抜粋して列記する。
- 様々な種類の印刷機が立ち並んでいる(下写真)。
- オンデマンド印刷機というデータを送り込み、印刷する機械があった。この機械は本体のモニターからは印刷自体はできないが、印刷の指示を行うことができる。
- 印刷に使われるカラーはシアン・マゼンタ・イエロー・ブラックの四色。印刷物は点の集合体になっている。
この極めて小さな点の集まりを網点(あみてん)といい、網点を様々に組み合わせて色の濃淡を表現している。
使用可能な色が4色とは少ない。色の三原色(シアン・マゼンタ・イエロー)を混ぜ合わせて広範囲の色を表せることは知っていても「それだけでほとんどの色が表現できる」ことはやはり驚きである。 - 他の印刷機で刷った時の色と違いが出ないように印刷機を選んでいる。
- 右上の写真に写っているのは刷版(さっぱん)。アルミの板にレーザーが当たったところだけを弾く特殊な塗料を塗ったもので、原稿をレイアウト・編集して製作した原版から作成する。刷版を印刷機に取りつけることで紙に印刷することができる。
- 上の写真2つはソーゴー印刷で発行された「スロウな旅北海道」の英語版。英語が読めなくとも言いたいことが伝わってくるような、きれいな写真が使われている。
- 出版物のひとつである「スロウ」。なぜ「スロー」とのばさずに「スロウ」と語尾をウで止めたのかについては理由がある。『SLOW』という言葉には「ゆっくり・穏やか」という意味以外にも「本物」という意味が含まれていて、「ありのままの北海道のよさを、ゆったりと伝える」という両方の意味を込めようとしたが、「スロー」では「ゆっくり・穏やか」のみが連想されてしまうと考えたからである。
CASE:Ms. Hasegawa.
『スロウな旅北海道』編集者の長谷川美希さんに記事を作成するうえでのポイントを伺った。
- 取材をするうえで、「こうに違いない」という思い込みはNG。必ず確認するという行為が大事。
- 記事を書く際は曖昧な言葉は使用せず、はっきりと書いたほうがいい。
- 一文は短ければ短いほど良く、形容詞は一文につき一つとするくらいに文章を区切ったほうがいい文章になる。
- 読み手に飽きさせない文章を書くように心がける。
- 写真一枚にもプライドを持って取り組む。
- 写真は多めに撮影しておく。予定の記事の内容と直接関係しないかもしれないが、別の記事で使う可能性がある。
最後に自分の伝えたいことや思っていたことが読み手に通じたときが嬉しいのだと話してくださった。
潜入報告
自分の正直な思いを述べることがこの仕事をする上で大切なのだと感じた。
自分の足で取材に行ったからこそわかるその場の空気や感じたことなども、間違いのない情報と一緒に伝えているのだと思った。それは簡単なようで難しいことのように感じる。それは自分の思いを文字に起こすことは難しいことだと思っているからで、自分の思いを文字に起こすことができるのはすごいことだと思う。雑誌は努力の塊のように思えた。さまざまな工程を経て手元に届く雑誌。これからは雑誌の見方が変わりそうである。
文章を書くことはこれからの人生でも数多く経験することになる。その意味でも読み手に思うことをしっかりと伝えられるような書き方や取材の仕方、さらには写真を撮るコツについて教わることができ、非常に実りあるインターンシップになった。また、実際にパソコンに向かい真剣に仕事をしている人を見たことで、自分もしっかり仕事をこなせるようになれたら、と働くことに対する意欲がとてもわいた。
今回の訪問で、非常に重要なことをたくさん吸収できた。お世話になった企業の皆様に感謝したい。
(取材・編集:帯広大谷短期大学地域教養学科1年「インターンシップⅠ」)
チームP:岩田 悠里 / 進藤 麻那 / 西村 拓海 / 三島 衣織