大谷短大生がゆく 「社長! 教えてください」

  • 第7回 株式会社 山本忠信商店(2016年8月12日 取材)

食を支えるヤマチュウ

株式会社 山本忠信商店、通称「ヤマチュウ」は現社長山本英明氏の祖父にあたる忠信氏が大阪からこの音更の地へやってきて豆類の取り扱いを目的として昭和28年に創業したことにはじまる。昭和49年、社員が増え、職場のスペースが狭くなってきたなどの理由により、現在の場所に移転した。

山本忠信商店の略称「ヤマチュウ」という呼び名を定着させたのは現社長だという。理由としては、社名に人の名前が入るのは社員採用などのときの学生の受けが悪く、会社の成長を目指すため社名変更も考えたが、山本忠信という祖父の名前を塗りつぶすことはできないということから現社長が「ヤマチュウ」という呼び名を定着させた。

現在、ヤマチュウでは「“つくる”を“食べる”のもっと近くに をテーマに素材のおいしさを生かした商売を目指している。また、「顔の見える農作物」というコンセプトを大切にしているが、これは作った人がどういう思いでこの作物を作ったかなどを伝えるためにしている。消費者も生産者の打ち出すこうした言葉を見ることによって、安心、安全に食べることができると思っていただけるようになるのだといわれた。さらには「農業をコミュニケーション産業に」という考え方を持って取り組んでいるという社長のお話に消費者との信頼関係を根本に置いた“十勝の食を支える”ヤマチュウの熱い思いを感じた。

 

力を合わせた食品加工で地域を元気に

今でも亜鉛の含有量を増やすことで筋肉痛になりにくい効果が期待できる“きなこパウダー”など魅力的な商品が多くあるが、これからやってみたいこととして、食品加工のグループを作ることだと話された。

採れた作物をそのまま外へ売って儲かっていた時期もあったが、これからはそれだけではだめ。十勝は素材型の農産物が多いが、地域内での加工をしなさすぎる。食品加工の仕事を新しく始めれば管内の生産額を増やせるばかりでなく、雇用を増やすこともできる。1社ではできなくてもグループとしてならできるのではないか。また、グループで行うことで、いろんな会社同士で新しい組み合わせも生まれるというメリットもある。そうなれば十勝はもっともっと活発になるかもしれない。山本社長の食品加工グループづくりへの熱い思いを聞いて、将来、そうしたmade in tokachiの加工品がたくさんできるかと思うと、とても楽しみである。

 

朝礼の効果

「ヤマチュウ」にも朝礼がある。普段はそれぞれの部署で嬉しかったことや、“有言実行する”ことを述べたりするとのことだが、会社全体で行う朝礼もあるという。内容は綱引きや“未成年の主張”という大声で社員みんなの前で主張を叫ぶというユニークな企画がたくさんある。朝礼で何をするかを考えるのも仕事のひとつである。

朝礼には、けじめをつけるなどの目的もあるが、笑うことで目を覚まさせる効果もあるとのこと。だとすれば思いっきり笑える企画を考えることも朝礼で何をするかを考える際の大切なポイントになる。また、誕生日やソフトボール大会などの表彰も朝礼の中で行われるので、もっと頑張ろうという意欲も湧くだろう。朝礼は仕事を効率よく進める手助けになるだけでなく、人前で物怖じしない気持ちまでも育てるのだと思った。

 

仕事への取り組み方

山本社長はおっしゃった。「企業は利益を出せば良いのではない。個人は給料をもらえば良いのではない」。意味の深い言葉だと思った。企業が利益だけを求めてしまえば、心から尽くそうと思える社員は少ないだろう。社員にしてもそうだ。給料だけを求めてしまったら、その気持ちは、行動や商品の品質にも表れると思う。良い仕事をする人とは「誰を喜ばすのか」、それを考えて仕事をしているのだという。そして、社員には失敗を恐れずチャレンジをしてほしいと思っている。失敗したことのない人に大きな仕事を任せられないのだという。たしかに、失敗という経験がなければ、大きな仕事も怖いばかりで動きだせないのだろうと思った。これらの言葉一つ一つに社長の心の広い人柄が表れていると思った。

そして、どの会社でもいえることだが、新入社員に求めることはコミュニケーション能力だそうだ。敬語が出来なくとも、間違えてしまっても、会社の人は新入社員を愛しているから、失敗しても良いという。失敗を恐れ無口になってしまうより、失敗を恐れず自分の気持ちを言えることが大事なのだと思った。好奇心も大事だという。好奇心を持って、何事もやるということが良い結果に結びつき、また、成長につながるのだと思った。

どこに就職するにしても、これらの考え方、心構えはとても大事なことだと思った。今後に生かしていきたい。

 

良い会社とは人を大切にする会社

社長のお話を聞いて「ヤマチュウ」という会社はとても暖かいところであると感じた。地域とのつながりを大事にし、何よりも社員のことを思っている。それは社長の人柄があってこそこのような形になっているのだと思う。社員を思いやる暖かい空気が流れているからこそ、質の高い商品が出来上がるのだと思った。

社会に出たら失敗はしてはいけないもの、だから、失敗を怖いものだと思っていたが、そうではなく、失敗はプラスに変えていくものだという新たな視点を持つことができた。そのためには積極性や好奇心、チャレンジ精神がなければならないこともわかった。 (三島 衣織 熊倉 いずみ 進藤 麻那)